ローリスク・ミドルリターン リスクを抑えた長期的で堅実な投資

投資の世界には【ローリスク・ミドルリターン】という言葉があります。

ハイリスクハイリターンという言葉は一般的にも使われる言葉であり、ある程度危険な賭けに出て勝てば大きな見返りが望める、というリスキーな賭けを表す言葉です。
ローリスクとはハイリスクの反対で、危険は少なく、比較的損失も低いことを意味します。
ハイリターンではなくミドルリターンとは、大きな見返りは望めないが、堅実で固い見返りは望めるという意味です。
つまりローリスク・ミドルリターンとはごく安全な投資で、そこそこの見返りが期待できる、というニュアンスになります。

これは投資で堅実に利益を得ようと考えるならば理想的な状況の一つであり、ローリスク・ミドルリターンな投資を手堅く続けることは上手な投資のスタイルと言えるでしょう
ローリスク・ミドルリターンを実現するには、まずローリスクの部分に着目するべきです。
それはつまり、とにかくリスクを抑えることを徹底するということです。

これは戦略的に考えた場合、負ける戦は絶対にしない、という思考に繋がります。
負けなければ、たとえ勝たなくても(大きなリターンはなくても)被害は最小限に抑えられるため、いくらでも再起が図れる、つまりチャンスはいくらでも作ることができるということです。

本稿では、投資の世界におけるローリスク・ミドルリターンの考え方を掘り下げ、考察し、投資の初心者でもその仕組みが理解できるよう解説します。

投資の世界ではリスクとリターンは相互関係にあるのが常識?

世の中にある大抵のことに共通して言えることは、、リスクとリターンは相互関係にあり、投資の世界でもそれが一般認識です。つまり、リスクの少ない投資には少ない利益しか望めない。リスキーな投資、つまりハイリスクを冒せば上手くいった時にハイリターンが望める。危険なくして大きな利益は得られない、大昔の人も【虎穴入らずんば虎子を得ず】の諺にそのメッセージを伝えています。

しかし投資の世界でもその理屈をそのまま当てはめてしまうのは早計に過ぎます。投資の世界は言うまでもなく非常に複雑な構造をしており、だからこそきっちりと知識をつけて行わなければ上手くいかないわけです。
しかし、逆に考えれば複雑な分だけ方法論がいくつも存在し、いくらでもやりようがある、と考えることもできるのできます。

現に投資の世界でも勝ち負けははっきり存在し、勝ち続けることが出来ている人は現実に存在します。
もちろん投資の世界に100%確実な儲け話は存在しません。
しかし確率の統計学が一面の真理として存在することは間違い無いのです。
ここで冒頭に述べた、ローリスクを徹底する、という理屈を思い出してみてください。

とにかくローリスクな投資のみを選んでいれば大きく損失を出す可能性は極めて低くなります。
そして数あるローリスク投資を続けることで、その経験から、ローリスクな投資の中でもリターンが期待できる投資商品を嗅ぎ分ける能力が身につきます。

これがローリスク・ミドルリターンな投資の基本概念です。

ではここから先は一例を紹介して解説します。

低金利を意識した不動産投資はローリスク・ミドルリターンの典型

投資の1つのスタイルに不動産投資があります。
なぜ、不動産投資なのか?をご説明すると、長期的な時間軸を利用する事での収益やご自身の資産を切り崩す事なく始めることができるという点でリスクを減らすことが可能だからです。

不動産投資とは土地や物件を購入し、運用することで利益を目指すことです。
例えばマンションを一室購入し、第三者に賃貸契約をするとします。
そうすると毎月家賃収入が発生します。
長期的に賃貸契約を継続し、家賃収入の累計がマンション購入費用を越えればその不動産投資は成功といえます。
この例が最も分かりやすい不動産投資の形です。

また土地を購入した場合、土地の値段は一定ではなく変動し、時に大きく値上がりすることもあり得ます。
これは一般的に行政が行う地域の開発に大きく依存します。
首都圏の場合、駅が近くになかった地域に新たに駅ができた時にはその周辺の土地は大きく値上がります。
利便性が増すことで地価が上がるという例です。

不動産が投資商材として手堅い理由は、運用することによって家賃収入などの利益を生み、さらに土地の場合、経年で価値が下がることはありません。
仮に長期保有をしていて、売却の際に物件価格が下がったとしても、投資金額から見た際に、赤字になる要素が非常に少ないと言えます。
これは現物資産の強みとも言えます。
土地の価格の高い低いはその場所の利便性という、かなりわかりやすい要素のため、素人の方でも優良な土地を選ぶことは難しくありません。

ローンで不動産を購入する際のローリスク・ミドルリターンの考え方

現実問題として不動産を現金で一括購入する例は一部の富裕層以外は考えづらいです。
多くの場合、不動産購入の際は、ローンを組むのが通例です。
銀行に相談して不動産ローンとして低金利で借りる目途が立つようなら、不動産投資はローリスク・ミドルリターンの手堅い投資となり得ます。
また自分自身が現在保有している預貯金や資産を崩すことなく、投資を始められます。

一般的にローンを組むのは銀行ですが、銀行側も当然、貸し倒れは避けたいために相談に親身になってくれます。
例えば購入を検討している物件が出てきた際、もしくは投資を考えはじめた段階で、不動産のプロに相談し、銀行側も優良物件であると考え、ローンを組んでくれるようであれば良好な投資プラン・そして物件であるという一定の指標になり得ます。
不動産業者はもちろんのことながら、銀行も投資商材を扱うプロという一面もあるため、こういった時は頼りになり、うまく活用すればローリスクの投資の助けとなります。

投資の世界には【レバレッジ】という言葉があります。
レバレッジとは他人の持つ資本で自己資本を高める、という考え方です。
ここまで解説した不動産投資を行う、自分自身と不動産ローンでお金を貸してくれる銀行の関係がまさにそれで、銀行は不動産購入を検討している人のお金を貸し出して手助けすることで、結果的に銀行自身も儲かるのです(金利を得るため)。

自身も銀行がお金を貸してくれる目処が立てば現状の現金では到底買えないような不動産購入が可能になるため、優良物件での不動産投資が成功すれば従来以上の利益が見込めます。
このように不動産ローンを活用することで、自分自身の預貯金や資産を減らす事なく、良質な物件も選びやすくなり、ローリスクにつながる、というプロセスも非常に手堅い手段といえます。

不動産は資産の中でも流動性が低く、これだけを見ればリスクが高く感じるかもしれませんが、優良物件を見つけた場合、逆に低価格で物件を購入することも可能です。
その物件にローンを組んで購入する価値もあり、その後、資産価値が上がり、賃料収入が上がるとローン自体も繰越返済を行う事ができ、ローン完済も早く済みます。
こういった観点からも資産運用の中でローリスクのジャンルであることは間違いありません。

不動産投資で大きなリスクといえば、災害などで物件が壊れてしまった時や、物件で自殺者が出てしまった時、などの不測の事態です。
現在は自殺者が出た部屋はそれを明記する義務があるのです。
しかし上記の2点のケースは保険でカバー出来ます。

現金購入で金利を抑える、もしくはローンを組んでくれる銀行とのレバレッジを積極活用する、といったリスクマネージメントを意識した不動産投資はまさにローリスク・ミドルリターンの典型といえます。

基本的に不動産投資は長期運用になるのが前提ですが、それは一戸建ての物件や、集合住宅を一棟で購入した場合はまとまった頭金が前提となるからです。
つまり初期費用が大きくなりがちなため、費用対効果を得るためには時間がかかるという理屈です。
しかしマンションの一室を購入、というような区分所有の場合、頭金は不要になる場合も多く、賃貸契約がすぐに始められるような状況であれば、不動産投資の中でも比較的早い段階で対比効果を得ることが出来ます。

繰り返しになりますが、ローンを組んで購入した不動産は自身の現金を減らすことなく、資産を保有することができたということになり、これは大きなメリットです。

【両建て】から見るローリスク・ミドルリターンの考え方

投資の定番に為替トレードがあります。
不動産投資以外にも、ローリスク・ミドルリターンの一例を簡単にご紹介いたします。

世界には様々なお金、通貨があり、その価値が常に流動し、相対的に価値が変わっています。
例えば2016年12月現在はアメリカの1ドルは約114円です。この相対価格は常に流動しています。
つまりこの段階で11,400円出せば100ドルと交換が出来ます。もし一ヶ月後に1ドルが120円になったとします。
この段階で100ドルを円に換金すれば12,000円になって返ってきます。
11,400円が12,000円になり、少し増えました。これが為替トレードです。

もしこれが10,000ドルでの換金だったらその収益も数十万円にもなります。
ドルや円の値上がり値下がりはその国の企業の株価に依存します。
例えば日本では車産業が盛んであり、日本車は世界に輸出されています。
もしトヨタが画期的な自動車を開発し、世界で世界中で大ヒットすればトヨタの株価は急上昇し、それに伴い、日本の車メーカーの株価も微増するでしょう。
それによって円の価値は上がると思われます。
このような状況を見極めて外国通貨との差額で儲けるのが為替トレードです。

このような為替トレードの世界で【両建て】というテクニックが存在します。
例えば1ドルが120円の時に、100ドル分を12,000円で買い、さらに12,000円分を円で保有しておきます。
つまり1ドル120円の場合、予め24,000円の投資資金を用意する必要があります。

そしてその後、ドル値が上昇し、相対的に円が下がってきたら円をドルに変えます。
例えば1ドル110円になった時点で、保有していた12,000円をドルに変えれば約110ドルになります。
12,000円で買った100ドルが約110ドルになりました。
しかし一方の100ドルを円に変えても11,000円にしかなりません。
元々は12,000円の価値があったはずなのに。

つまりドル・円で見た場合に損も得もしていないことがわかると思います。
仮にドルが上昇せず、円が上昇したとしても結果は同じです。損も得もしません。
予め円とドルを両方同じ分だけ買っておくことでドルや円が上がっても下がっても損はしないのです。
これが【両建て】の考え方です。

投資とはすなわち資産の売買であり、資産とは買った後も価値は下がりません。むしろ上がる可能性もあります。

これが資産と商品の違いです。

商品とは買ってから使うことで消費されたり、買った時点で中古品となったりするため価値が上がることはありません。
しかし資産は買った後も価値は変わらないという性質があり、お金と同じ役割を果たすのです。
投資の世界で利益を出すためには【資産】と【商品】の性質の違いを理解することが基本となります。

これは、投資におけるローリスクは割と簡単に作れるという例えです。

為替トレードで両建てを上手に活用すれば、いわゆる負けない戦が可能となるため、長期的に続ければローリスク・ミドルリターンを実現できる可能性があります。
両建ては元々、株式売買の世界で生まれたテクニックで、保有している株を売りに出し、その株を同じ額で買うことで“損も得もしないで済ます”というテクニックです。
こちらも売買した後、価値が急激には変わらない【資産】の特性を活かしたテクニックといえます。
【商品】で同じこと、つまり二股買いして、どちらかがハズレだった場合、絶対に損をしますよね。絶対に損をしますね。

投資におけるローリスク・ミドルリターンの極意は、とにかくローリスク以外には手を出さないことが鉄則とします。
今回は為替トレードを例に、両建てのような、ローリスクは作ることも出来る、という概念を覚えておけば他の投資商材にも何かと活用できるでしょう。

まとめ

投資におけるローリスク・ミドルリターンは確実に存在しますが、その場合、利回りや長期運用を考える必要があります。
本稿で紹介したように、出来る限りリスクを避け、ローリスクに徹することで比較的に容易に(素人の方でも理解できるレベルで)ローリスク・ミドルリターンの投資運用は可能であるということはご理解いただけたと思います。

ローリスク・ミドルリターンを実現するために最も肝心なのはローリスクを意識し、深い理解を身につけることです。つまり負けない戦しかしないことを徹底することです。

この考え方で投資を続ければ自然とローリスクの投資を嗅ぎ分ける嗅覚が身につくでしょう。それがローリスク・ミドルリターンを実現する第一歩です。です。
そのプロセスで様々な投資を経験することで、経験則により、多少のリターンを拾っていけるようになります。
ローリスクの投資にハイリターンはないと割り切ることも大切です。

以上のようなプロセスを踏むことで確実なローリスク・ミドルリターンを拾っていくことのできる投資術が完成していくと考えられます。